歩き方がおかしい、足を引きずっている

  • 膝蓋骨脱臼
  • 前十字靭帯断裂
  • 変形性関節症
  • 椎間板ヘルニア
  • 骨折
  • 関節リウマチ
  • 治療について

膝蓋骨脱臼

原因

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、後肢にある膝蓋骨(いわゆる膝のさら)が正常な位置から逸脱した状態を言います。本症には内側にはずれる内方脱臼と外側にはずれる外方脱臼がありますが、その発生頻度は圧倒的に内方脱臼が高くなります。
原因は先天性と後天性にわけられます。
先天性の場合は出生時からの膝関節周囲の筋肉や骨の形成異常がおこった時、その結果、膝蓋骨と付着する筋肉(大腿四頭筋)の方向が異常になって生じるとされています。
後天性の場合は、打撲や落下などの外傷であったり、骨に関連する栄養障害が原因であったりもします。

症状

グレード1:膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸ばして膝蓋骨を押すと脱臼するレベルです。無症状な事が多いが、時々スキップ様な歩行をする事があります。
グレード2:膝関節は不安定で、寝起き時のように膝関節を屈曲していると脱臼し一時的に歩行が思うようにいかないことがあります。
グレード3:膝蓋骨は常に脱臼状態です。指で押すと正常な位置には戻りますがすぐにまた脱臼してしまいます。多くは膝関節を屈曲させたまま歩行します。
グレード4:膝蓋骨は常に脱臼状態で指で押しても正常な位置にもどりません。大腿骨や脛骨(けいこつ)にも影響して重度な変形をきたします。常に患肢を屈曲させ、うずくまった姿勢で歩行するか前肢に体重をのせ、患肢を浮かせたまま歩行します。

多い種類

ポメラニアン、プードル、マルチーズ、チワワ、ヨークシャーテリア、柴犬など

治療

保存療法と外科療法があります。
根本的な治療の場合は外科的に手術を行います。
保存療法は症状がない場合や手術を行えない場合に適応となります。
運動制限、減量、生活環境の改善を行い、鎮痛剤を使用します。
肥満な場合は減量を指示しますし、フローリングなどの滑りやすい床での生活は症状の悪化につながりやすいため、カーペットなど滑らない床に変更する事を考慮していただきます。ジャンプや過度な回転運動も制限していただきます。
出来ない場合は外科手術が適応となります。

前十字靭帯断裂

原因

犬では、スポーツなどの外傷による断裂はまれで、ほとんどは加齢性および変性性変化があらかじめ靭帯に生じていて、力学的ストレスが後押しすることで断裂します。その為、散歩や階段を上るといった日常生活で行うような軽微な運動をしただけで損傷してしまう事があります。一方、猫では外傷による発症が一般的です。

症状

靭帯が断裂した直後は、痛みのために地面に患肢を最小限しか着けないような歩き方をしたり、足を挙げたままの状態になったりします。

多い種類

ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、バーニーズマウンテン、ジャックラッセルテリア、トイプードル、ヨークシャーテリアなど

治療

保存療法と外科療法があります。
保存療法は鎮痛剤やサプリメントを使用しながら、肥満があれば減量、また、フローリングなどの滑る床や段差を解消するなどの生活環境の改善、リハビリなどを考慮します。
外科療法については、保存療法に反応しない、重度の肥満、膝の半月板損傷が疑われる、膝関節に著しい不安定があるなどで推奨されています。術式については様々で200以上存在しています。筋膜を用いて靭帯を再建する方法、他の靭帯や人口靭帯で前十字靭帯を代用する方法や、骨を関節が安定する形に切除する方法などが知られています。
前十字靭帯断裂の治療後は、十分な歩行能力までに回復するには2~6か月を要します。
一般的に、外科療法を行ったほうが、より早期に回復する傾向があります。

変形性関節症

原因

変形性関節症は「全身性」と「局所性」に分類されます。
「全身性」は大小関節が多発性にら患し、原因は不明ですが、要因として、加齢、肥満、遺伝、環境などが挙げられています。
「局所性」は1つあるいはいくつかの関節が侵されます。外傷、奇形、異形成関節、肥満などに基づく二次的な場合があり、股関節および膝関節などにしばしばみられます。

症状

初期には症状を示さない事が多く、最初にみられる症状としては患部を触った際の関節の軽度な疼痛、運動時のこわばり、ぎこちなさなどが確認できるかもしれません。後には関節に絶えず疼痛を感じるようになります。また関節が腫れてきたり、強直を起こすこともあります。

多い種類

犬・猫全種

治療

体重管理、運動様式や生活環境の改善、疼痛管理といった保存療法が中心になります。
保存療法に全く反応しない場合には外科療法を検討します。

椎間板ヘルニア

原因

椎間板ヘルニアとは、椎間板に変性が生じ、その内容物が脊柱管内に突出することにより脊髄を傷害し、さまざまな神経症状を引き起こす疾患です。一般に頸椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)に発症します。
椎間板の変性には繊維質変性と軟骨様変性の二つのタイプがあります。
繊維質変性は椎間板内にある繊維輪が非特異的な加齢性変化によって、繊維輪が背側に突出して脊髄を刺激して慢性に進行する病態です。
軟骨様変性は若齢時から椎間板の変性が速やかに進行して急性発症を主とする病態です。

症状

運動失調、麻痺が認められるようになり、重症になると自力で起き上がれなくなり、四肢の完全麻痺や自力による排便、排尿に困難が見られる場合があります。

多い種類

ダックスフンド、シーズー、ペキニーズ、ビーグルなど

治療

外科的治療と内科的治療に大別されます。症状の重症度、症状発症からの期間、動物の状態などにより決定されます。
内科的治療は絶対安静(ケージレスト)を基本に消炎鎮痛処置などを行っていきます。
内科的治療で好転しない場合や重症度によっては即外科処置の場合があります。
外科的治療の際には、椎弓の一部を切除して脊柱管を広げ圧迫を解除する片側椎弓切除術が一般的に選択されます。

骨折

原因・症状

高い所やソファから飛び降りたり時、階段からの落下、フローリングで滑っての転倒、飼い主さんが誤って踏んでしまう、交通事故、喧嘩など日常の中で間違って骨折してしまう事があります。
元気や食欲が落ちたり、患部を舐めるや足を引きずる、トイレがうまくできなかったりなどの行動が見られたら骨折しているかもしれません。
下顎、足、背骨、あばら骨、骨盤などあらゆる場所で骨折する可能性があります。

多い種類

犬・猫全種に起こりえますが、ポメラニアンなど足の細い小型犬やイタリアン・グレイハウンドなど競技用の犬種などは骨折しやすくなります。

治療

骨折時の治療法は主に外科的にピンやプレートを利用した「ピン・プレート固定法」、外側からピンで固定する「創外固定法」、またはギプスで固定する「外副子固定法」の3つがあります。

関節リウマチ

原因

関節リウマチとは自身の免疫異常によって起こる完治の難しい関節炎をさします。
原因は不明ですが、何らかの理由で誘発因子(抗原)が関節の中に侵入し、自身がそれに対して攻撃することで慢性炎症を起こし、関節痛、関節の腫脹、関節内液の増量などが認められます。

症状

5歳前後の小型犬に多く発生しやすく、初期は発熱、元気、食欲の低下だけみられ、中期になると歩行異常が認められるともに、左右対称に関節の腫脹が認められます。特に関節は手首と足首が多いです。末期になると、膝関節も含めた多くの関節まで進行し、起立したり、歩行したりすることができなくなります。多くの症例はアザラシのような移動の仕方になり、排便、排尿など飼い主の介助が必要になってきます。

多い種類

ミニチュア・ダックス、チワワ、トイ・プードル、シェットランド・シープドックなど

治療

早期発見、早期治療は基本ですが、関節リウマチの早期発見は非常に難しいです。
診断が下された場合、炎症の緩和、免疫のバランスを目的に副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)や免疫抑制剤を使用します。
関節リウマチの予後は一般的に悪く、治療しなければ早期に関節が破壊されますし、治療を行っても関節の破壊は進行し、最終的には歩行や起立も難しくなってきます。

治療について

《あーす動物病院の整形外科治療の3つの特徴》

01 整形外科治療の3つの特徴

高齢の犬・猫の変形性関節症に安全性の高い治療を実施しています
変形性関節症は、慢性的な痛みを伴う疾患の中でも最も多い疾患の1つであり、加齢・肥満・外傷・遺伝などさまざまな要因が関与しています。
犬も猫も高齢化に伴い変形性関節症は、多く発症して、高齢の犬で40%、猫で74%以上が発症しているという報告もあります。当院では、肝臓や、腎臓への負担も少なく、安全に長期間治療に使用できる、犬の変形性関節症用の代表的な治療薬『リブレラ』、猫の変形性関節症用の治療薬『ソレンシア』などを用いて、高齢の犬や、猫の『足の痛み』のケアを実施しています。

02 予防~治療まで一貫して対応

当院では骨折や、膝蓋骨脱臼などは『防ぐこともできる整形外科疾患』だと考えております。そのため、骨折や膝蓋骨脱臼を防ぐための抱っこの仕方や、生活の仕方などを説明して、骨折や、膝蓋骨脱臼を『治す』だけでなく『予防』にも力を入れております。

03 二次病院との連携

高度医療施設とも連携体制を築いており、必要に応じて、東京都内の病院や、埼玉県、千葉県にある2次診療施設へ手術のご紹介もさせて頂いております。