CASE

パグの角膜潰瘍|角膜の白濁・充血が点眼治療で改善した症例 NEW

症例

犬種: パグ
年齢: 3歳
主訴: 右眼の充血、目脂

前日から右眼の結膜が赤くなり、目脂が出るとのことで来院されました。

診察時には右眼の結膜充血に加えて、角膜全体がやや白く濁っている状態が確認されました。

元気・食欲は良好で、飼い主様からは眼を強く擦っている様子は確認されていませんでした。

診断

右眼の表在性角膜潰瘍(角膜炎・角膜浮腫を伴う)

また、初診時の涙液量が両眼とも少なかったことから、涙液量の低下や短頭種特有の眼表面環境が角膜障害に関与した可能性も考えました。

パグなどの短頭種は眼球が突出しているため角膜が外部からの刺激を受けやすく、涙液の状態や瞬きなど複数の要因によって角膜障害を起こすことがあります。

実施した検査および治療

眼科検査

眼の状態を詳しく確認するため、以下の検査を実施しました。

スリットランプ検査では、右眼角膜に浅い潰瘍と角膜の白濁を確認しました。

フルオレセイン染色検査では角膜表面に点状の染色が認められ、角膜上皮が傷ついていることが確認されました。

シルマー涙液試験(STT)では初診時に左右とも7mm/分と涙液量の低下が認められました。

さらに角膜表面のスタンプ検査を行ったところ、上皮細胞・有核細胞が主体で、明らかな炎症細胞は確認されませんでした。

治療

角膜潰瘍に対して、

  • 角膜の二次感染を予防するための抗菌点眼

  • 角膜表面を保護・保湿するためのヒアルロン酸点眼

  • 眼を掻いたり擦ったりすることを防ぐためのエリザベスカラー

を使用しました。

また、以前から皮膚の痒みがあり、治療中に顔を掻こうとする行動もみられたため、痒みによる眼への自己刺激を減らす目的でゼンレリアによる治療も行いました。

治療を行う理由

角膜は透明で非常に繊細な組織です。

浅い角膜潰瘍であれば適切な治療によって比較的速やかに改善することがありますが、眼を擦ったり細菌感染を起こしたりすると、潰瘍が深くなってしまう場合があります。

そのため今回は、角膜を保護しながら二次感染と自己損傷を防ぎ、角膜上皮が正常に修復できる環境を作ることを治療の中心としました。

また涙液には角膜を乾燥や摩擦から守る重要な役割があるため、涙液量を定期的に測定しながらヒアルロン酸点眼による眼表面の保護を行っています。

治療後の経過

治療開始後、角膜の白濁と結膜充血は徐々に改善しました。

再診時には目脂や眼のショボつきも減少し、フルオレセイン染色で確認される角膜潰瘍も徐々に小さくなりました。

治療途中にはごく小さな点状の角膜障害が残っていたため、点眼回数を増やしながら慎重に経過観察を続けました。

その後の再診では、

STT:右12mm/分・左12mm/分

まで改善し、角膜の透明度も良好となりました。

フルオレセイン染色検査も陰性となり、角膜潰瘍は治癒したと判断しました。

現在の治療方針

角膜潰瘍についてはいったん治療終了としています。

ただし、これまでの検査で涙液量にばらつきがみられていること、またパグという犬種の特徴も考慮し、角膜を乾燥や摩擦から守る目的でヒアルロン酸点眼を予防的に継続しています。

また皮膚・顔周囲の痒みに対してはゼンレリアを継続しています。

今後も定期的にシルマー涙液試験を行い、涙液量が安定しているか確認していく予定です。

注意点とリスク

角膜潰瘍は一度治癒しても、眼を擦る、乾燥する、被毛が角膜に接触するなどの刺激によって再発することがあります。

特にパグなどの短頭種では、眼球が突出しているため角膜が外部からの影響を受けやすい傾向があります。

今後、

眼をショボショボする、充血する、目脂が増える、眼を擦る、角膜が白く濁る

といった変化がみられた場合には、早めの眼科検査が重要です。

また涙液量が継続して低下する場合には、角結膜乾燥症(ドライアイ)などについても評価し、必要に応じて長期的な眼表面の治療を検討します。

治療費

今回の治療費:50000円程度

費用に含まれるもの:
診察料、眼科検査(シルマー涙液試験・フルオレセイン染色・スリットランプ検査・角膜細胞診など)、点眼薬、内服薬、再診料など

※症状や必要な検査、治療期間、使用する薬剤によって費用は異なります。

治療前 右眼の角膜が白く濁り、結膜の充血も認められました。検査の結果、表在性角膜潰瘍が確認されました。

治療後 点眼治療と眼の保護を継続した結果、角膜の白濁と充血は改善しました。フルオレセイン染色検査も陰性となり、角膜潰瘍の治癒を確認しました。

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