CASE 症例紹介
肛門周囲腺腫の症例報告 NEW
13歳・未去勢雄のMIX犬/肛門周囲のしこりと出血
症例
13歳、MIX犬、未去勢の男の子です。
肛門の周囲に小さなしこりがみられ、一部から出血も認められたため診察を行いました。
診察では、肛門周囲の皮膚に境界の比較的明瞭な隆起性の腫瘤を認めました。腫瘤は皮膚とともに動き、深部組織への強い固定は認めませんでした。
年齢、性別、未去勢であること、発生部位、腫瘤の形状などから、肛門周囲腺腫を第一に疑いました。
診断
肛門周囲腺腫
(Perianal gland adenoma)
手術で摘出した腫瘤を病理組織検査に提出した結果、良性の肛門周囲腺腫と診断されました。
病理検査では、肛門周囲腺由来の細胞が小葉状に増殖していましたが、
細胞の異型性は軽度
悪性所見なし
腫瘍性壊死なし
明らかな浸潤性なし
という結果で、悪性腫瘍ではありませんでした。
同時に摘出した左右の精巣についても、腫瘍性変化は認められませんでした。
実施した検査および治療
診察時には腫瘤の位置、大きさ、可動性、表面の状態を確認し、一部出血していた部位から細胞診も実施しました。
ただし、出血部位からのスタンプ標本では血液成分や表層の細胞が中心となり、腫瘍そのものを十分に評価できる細胞が採取できなかったため、最終診断には病理組織検査が必要と判断しました。
また、13歳という年齢で全身麻酔を行うため、術前検査として、
血液検査
胸部レントゲン検査
心電図検査
心臓バイオマーカー検査
心臓超音波検査
などを実施しました。
心臓バイオマーカーでは軽度の上昇を認めたため、追加で心臓超音波検査を行いましたが、明らかな心拡大や心筋肥厚、有意な弁逆流などは確認されませんでした。
全身状態と麻酔リスクを評価したうえで、肛門周囲腫瘤の摘出と去勢手術を同時に実施しました。
摘出した腫瘤および精巣は病理検査に提出しています。
なぜ去勢手術も同時に行うのか
肛門周囲腺腫は、特に高齢の未去勢雄犬に多くみられる良性腫瘍です。
この腫瘍は男性ホルモンの影響を受けて増殖する性質があるため、腫瘤だけを切除しても、男性ホルモンの影響が続くことで別の場所に新たな腫瘤が形成されたり、再発したりする可能性があります。
そのため、未去勢の男の子では、全身状態が許せば
腫瘤摘出+去勢手術
を同時に行うことが一般的な治療方針となります。
今回も高齢ではありましたが、術前検査で全身状態を確認したうえで、1回の麻酔で両方の処置を行いました。
治療前・治療後
治療前
肛門周囲に隆起した腫瘤がみられ、一部から出血も認められました。
年齢・性別・発生部位から肛門周囲腺腫が強く疑われましたが、外観だけでは良性・悪性を完全に判断することはできません。
手術後
腫瘤を切除し、同時に去勢手術を実施しました。
病理検査の結果は良性の肛門周囲腺腫でした。
術後は傷口の腫れや感染、排便時の刺激などに注意しながら経過を確認しています。
現在の治療方針
病理検査で良性腫瘍であることが確認され、さらに去勢手術も実施しているため、現時点では追加の抗がん治療などは必要ありません。
今後は、
手術部位の治癒確認
新たなしこりができていないか
出血や腫れがないか
排便時に痛みや違和感がないか
などを定期的に確認していきます。
今回のような肛門周囲腺腫では、去勢によって男性ホルモンの影響を減らすことで、今後の再発・新生リスクを下げることが期待できます。
注意点とリスク
肛門周囲にできる腫瘤がすべて肛門周囲腺腫とは限りません。
肛門周囲には、
肛門周囲腺癌
肛門嚢アポクリン腺癌
皮脂腺系腫瘍
その他の皮膚腫瘍
などが発生することもあります。
特に、急速に大きくなる、強い潰瘍や出血を伴う、深部に固定されている、排便しづらそうにする、といった場合には悪性腫瘍も含めた検査が必要です。
また、肛門周囲の手術では、傷口が便で汚染されやすく、術後感染や縫合部の離開などにも注意が必要です。
高齢犬では年齢だけで麻酔の可否を決めるのではなく、血液検査、胸部レントゲン、心電図、必要に応じて心臓超音波検査などを組み合わせ、個々の状態に合わせて麻酔リスクを評価することが大切です。
費用
今回のような症例では、状態や実施する検査内容によって費用が変わります。
目安として、
術前検査:約30,000~40,000円程度
去勢手術+肛門周囲腫瘤摘出+麻酔管理:約50000円~
病理組織検査:約○○,○○○円
となります。
※年齢、体重、腫瘤の大きさ・位置、麻酔時間、追加検査の有無などによって料金は異なります。
※診察時に必要な検査・治療内容と費用をご説明いたします。