CASE

若齢猫にみられた角膜白濁・角膜炎の治療例 NEW

症例

日本猫、約7か月齢。

「片方の眼が白く曇って見える」とのことで来院されました。一昨日頃から元気・食欲の低下も認められていましたが、来院当日の朝から食欲は回復傾向とのことでした。

鼻水はなく、くしゃみは前日に1回認めた程度でした。飼い主様から積極的に眼を掻いている様子は確認されていませんでしたが、詳しくお話を伺うと、普段からお気に入りの人形などに顔を擦りつけることがあるとのことでした。

初診時には39.6℃の発熱、結膜の充血、角膜の一部に白濁を認めました。また、歯石がほとんどない若齢猫であるにもかかわらず、中等度の歯肉炎も認められました。

診断

角膜炎(外傷性角膜炎疑い)

角膜の5時方向を中心に限局した白濁が認められました。

フルオレセイン染色検査では明らかな染色は確認されず、診察時点では角膜表面に明確な潰瘍は認めませんでした。

ただし、物に顔を擦りつける習慣があることや病変の形態から、

何らかの刺激や擦過によって角膜に炎症が生じた可能性

を第一に考えました。

一方、39.6℃の発熱と元気・食欲低下を伴っていたことから、眼だけの局所的な外傷ですべてを説明するのではなく、猫ヘルペスウイルスなどの感染症に伴う結膜・角膜炎についても鑑別に入れました。

ワクチン接種歴がある猫でも感染を完全に防げるわけではなく、症状が軽度または典型的でない場合もあるため、全身状態を含めて慎重に経過を確認することとしました。

実施した検査および治療

眼の状態を確認するため、視診および眼科検査を行い、フルオレセイン染色検査によって角膜表面に傷や潰瘍がないかを確認しました。

初診時には結膜充血と限局性の角膜白濁を認めましたが、フルオレセイン染色は陰性でした。

治療として、

  • 抗菌点眼薬

  • 消炎鎮痛薬

  • インターフェロン製剤

  • 全身状態を考慮した注射治療

などを実施しました。

点眼を非常に嫌がる猫ちゃんであり、飼い主様も点眼に慣れていなかったため、複数の点眼薬を処方するのではなく、ご家庭で確実に継続できる点眼治療を優先しました。

治療を行う理由

角膜は透明な組織であるため、炎症や浮腫が生じると白く曇って見えることがあります。

軽度の角膜炎であれば適切な治療によって速やかに改善することがありますが、角膜の傷から感染が起こった場合には、角膜潰瘍の進行や角膜の深い部分まで障害が及ぶ可能性があります。

そのため、「白くなっているだけ」と判断せず、角膜表面の傷の有無を確認しながら治療を開始しました。

また今回は発熱と元気・食欲低下も認められたため、外傷だけではなくウイルス感染などの全身性疾患が背景に存在する可能性も考慮して治療を行いました。

治療後の経過

治療開始後、元気・食欲は速やかに回復しました。

翌日の再診では体温は39.3℃まで低下し、角膜の白濁も初診時より薄くなっていました。

その後も点眼治療を継続したところ、再診時には初診時に認められた角膜白濁はほぼ消失し、眼の状態は良好となりました。

強い眼脂、眼瞼痙攣、角膜血管新生なども認められず、良好な経過をたどっています。

現在の治療方針

角膜炎については大きく改善しているため、現在は必要最小限の点眼治療を行いながら経過を確認しています。

一方、眼の症状が改善した後も中等度の歯肉炎が残っています。

今回の眼症状との直接的な関連は確定できませんが、若齢猫で歯石がほとんどないにもかかわらず歯肉炎が認められることから、猫カリシウイルスなどの感染症や免疫状態についても今後注意していく予定です。

元保護猫で過去の猫免疫不全ウイルス(FIV)検査は陰性とのことですが、検査時期によっては感染初期を検出できない場合もあるため、今後予定している避妊手術の術前検査時にFIV・FeLV検査を再度行う予定です。

注意点とリスク

猫の角膜炎では、外傷以外にも猫ヘルペスウイルスなどの感染症が関与していることがあります。

一度改善しても再発する場合があるため、

「眼を細める」「涙や眼脂が増える」「眼を擦る」「角膜が再び白くなる」「結膜が赤くなる」

などの症状が認められた場合には、早めの診察が必要です。

また、角膜潰瘍が存在する状態で一部のステロイド点眼薬を使用すると角膜病変を悪化させる可能性があるため、眼の状態を確認せずに以前処方された点眼薬などを自己判断で使用しないことも重要です。

今回のように眼症状と同時に発熱や食欲低下などが認められる場合には、眼だけではなく全身状態を含めた診察が必要になることがあります。

費用

この症例では、診察時の眼科検査、フルオレセイン染色検査、点眼薬、注射・内服治療などを状態に応じて実施しています。

1回の診察・検査・治療費:2000円~10,000円程度

※症状や実施する検査・治療内容によって費用は異なります。
※FIV・FeLV検査、避妊手術および術前検査の費用は今回の角膜炎治療費には含まれません。

「左眼の角膜の一部に白い濁りが認められました。結膜の充血に加えて39.6℃の発熱と元気・食欲低下も認められたため、外傷だけでなく感染症の可能性も考慮して治療を開始しました。」

「治療開始後、元気・食欲は回復し、角膜の白濁も徐々に改善しました。再診時には白濁はほぼ消失し、眼の状態は良好です。現在は残存する歯肉炎を含め、全身状態についても継続して経過を確認しています。」

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