CASE 症例紹介
「15歳ペキニーズ 慢性角膜炎・甲状腺機能低下症・膵炎を伴った症例」
診断
来院時は、左前肢を舐める行動を主訴としていましたが、診察では趾間炎に加えて、角膜混濁や結膜充血、高眼圧を疑う慢性的な眼病変が認められました。
また、元気の低下、徐脈・不整脈、低体温傾向などもみられ、全身検査の結果から甲状腺機能低下症が疑われました。
経過中、一時的に呼吸促迫・努力呼吸がみられたため、休診日に二次診療施設を受診しました。身体検査と血液ガス検査を行い、頸部を冷却することで呼吸状態は改善しました。その後、当院で再検査を行ったところ膵炎を示唆する所見が認められ、治療を継続しました。
実施した検査
全身状態を把握するため、以下の検査を行いました。
血液検査
甲状腺ホルモン検査(T4・fT4・TSH)
炎症マーカー(CRP)
膵炎マーカー(Spec cPL)
胸腹部レントゲン検査
心電図検査
眼科検査
フルオレセイン染色
瞳孔反射・対光反射の確認
歩行・神経学的評価
入院下での呼吸数、体温、食欲、行動観察
治療
症状と検査結果に合わせて、
甲状腺ホルモン補充療法
プレドニゾロンによる抗炎症治療
抗菌薬
抗菌点眼
抗炎症点眼
ヒアルロン酸点眼
必要に応じた鎮痛治療
鼻汁に対する点鼻・抗菌治療
などを行いました。
治療を行った理由
眼については、視覚低下を伴う慢性病変が疑われましたが、眼球摘出などの積極的治療を急ぐよりも、疼痛や炎症を抑え、眼をできるだけ快適な状態で維持する保存的治療を選択しました。
プレドニゾロンは、眼や趾間の炎症を抑える目的で開始し、状態が安定したため徐々に減量しています。
甲状腺ホルモンが低値で、徐脈や低体温傾向、活動性低下などもみられたため、甲状腺ホルモン補充療法を開始しました。
また、途中で膵炎や上部気道炎症を疑う所見がみられたため、その時点の症状に合わせて抗菌治療や全身管理を追加しました。
経過
治療開始後は、まず趾間炎が改善し、カラーを装着しなくても足を舐める様子がみられなくなりました。
甲状腺治療開始後は、表情や活動性が明らかに改善し、診察室でも以前より活発な様子がみられるようになりました。
眼についても、
結膜充血の改善
眼脂・流涙の減少
眼を擦る行動の消失
ショボつきや疼痛徴候の消失
角膜病変の悪化なし
と、保存的治療で良好にコントロールされています。
一時的に呼吸促迫、努力呼吸、膿性鼻汁、膵炎を疑う炎症反応の上昇がみられましたが、その後は元気・食欲が回復し、鼻汁や呼吸状態も改善しました。円運動や斜頸も減少しています。
現在の治療方針
現在は全身状態が安定しているため、治療を追加する段階から、必要な薬を徐々に減らしながら再発がないか確認する段階へ移行しています。
甲状腺ホルモン補充療法は継続
プレドニゾロンは漸減
鎮痛薬も減量
抗菌薬は症状改善後に休薬
点眼は眼の状態を見ながら回数を調整
定期的にT4や炎症反応を確認
しています。
現在は元気・食欲ともに良好で、鼻汁や眼の疼痛徴候はなく、趾間炎も落ち着いています。安静時呼吸数も13回/分と安定しています。
治療費
治療費の目安:外来治療で1日あたり8000円〜30000円程度
※症状や検査内容、入院の有無、使用する薬剤によって費用は異なります。精密検査や入院が必要な場合は別途費用がかかります。