CASE 症例紹介
急に眼が腫れた若齢猫の眼瞼炎|点眼治療で改善した症例
症例
オリエンタルロングヘアー 1歳
「左眼が急に腫れた」とのことで来院されました。
来院2日前から左眼に黒っぽい目脂がみられ、その翌日から眼の周囲が急に腫れてきたとのことでした。
初診時には、左眼の内眼角から眼瞼にかけて明らかな腫脹と発赤があり、眼瞼の一部には痂皮(かさぶた)も認められました。
一方で、眼球そのものには明らかな異常は確認されませんでした。
診断
左眼瞼炎・眼瞼結膜炎
眼の周囲、特に眼瞼を中心とした急性炎症と診断しました。
異物や毛、埃などが眼に入り一時的に強い刺激を起こした可能性や、眼瞼への軽微な外傷などを考えました。
治療経過中には眼瞼の痂皮から好中球を主体とした炎症細胞も確認されたため、経過としては好中球性眼瞼炎と考えられました。
ただし、原因となる異物や細菌そのものが確認されたわけではないため、原因については断定していません。
初診時には、対光反射・威嚇反射などの確認、スリットランプ検査、フルオレセイン染色検査、病変部の細胞診を実施しました。
眼球そのものには明らかな異常を認めず、角膜にも傷は確認されませんでした。初回の細胞診ではわずかな上皮細胞が認められる程度であったため、まずは眼瞼および眼表面の炎症を抑える目的で非ステロイド性抗炎症点眼薬(ティアローズ)による治療を開始しました。
治療後、眼瞼の強い腫脹は大きく改善しましたが、軽度の紅斑と痂皮が残存しました。
その後の再診では、痂皮の形成部位が変化しており、再度行った細胞診で好中球性炎症が確認されました。このため、細菌性炎症の関与も考慮し、抗菌点眼薬(ロメワン)による治療を行いました。
治療を行う理由
初診時には眼瞼の腫れが目立っていましたが、角膜や眼球内部に明らかな異常を認めなかったため、まず抗炎症点眼薬による治療を選択しました。
その後、腫脹自体は改善したものの、眼瞼の紅斑・痂皮が完全には消失せず、さらに痂皮の形成部位が変化しました。
再検査した細胞診で好中球が確認されたことから、眼瞼表面に細菌感染が二次的に関与している可能性も考え、抗菌点眼薬を追加しました。
治療後の経過
ティアローズによる治療開始後、初診時にみられた強い眼瞼腫脹は明らかに改善しました。
一方、眼瞼には軽度の紅斑と痂皮が残り、再診時には痂皮の位置にも変化が認められました。細胞診で好中球性炎症が確認されたため、ロメワンによる抗菌治療へ進みました。
ロメワン開始から1週間後の再診では、眼瞼の紅斑・痂皮ともにさらに改善し、良好な経過が確認されました。
最終診察時には眼瞼の腫脹は消失し、眼球にも異常を認めなかったため、積極的な治療は終了し経過観察としました。
現在の治療方針
現在は眼瞼炎が良好に改善しているため、追加の点眼治療は行わず経過観察としています。
最終診察時には眼表面に毛が接触している様子が確認されたため、今後も同じ場所に毛が繰り返し接触して角膜を刺激しないか注意して観察していきます。
注意点とリスク
猫の眼瞼炎は、異物や外傷などの一過性の刺激だけでなく、細菌感染、猫ヘルペスウイルスなどの感染症、アレルギー・皮膚疾患など、さまざまな原因で起こります。
また、今回のように眼瞼の炎症から始まった場合でも、角膜炎や角膜潰瘍を併発する可能性があります。
特に、眼を開けにくそうにする・眼を強く擦る・涙や眼脂が急に増える・角膜が白く濁るなどの変化がみられた場合には、早めの眼科検査が重要です。
今回の症例では良好に改善しましたが、同じ場所に繰り返し炎症が起こる場合には、感染症検査など追加検査を検討します。
費用
本症例では、診察に加えて眼科検査、フルオレセイン染色検査、細胞診、点眼治療などを行っています。
費用は実施する検査・治療内容によって異なります。
今回の場合は総額にすると、18000〜19000円くらいになります。
当院では症状に応じて必要な検査をご提案し、飼い主様と相談しながら段階的に検査・治療を進めています。